当サイトを最適な状態で閲覧していただくにはブラウザのJavaScriptを有効にしてご利用下さい。
JavaScriptを無効のままご覧いただいた場合には一部機能がご利用頂けない場合や正しい情報を取得できない場合がございます。

LIFE

Designer’s interview

333.jpg
Masujiro Fukuhara 福原 益次郎 × Kazuhiko Tachikawa 立川 和彦 “制約“から創り出される 業界を常に突き進む価値創造力。 それはプラスとマイナスの繰り返し。
注文住宅や分譲マンションなど、様々なインテリア空間で使われているKAWAJUNの製品。機能性だけでなくシンプルながらデザイン細部までこだわった製品は多くの人に愛されている。今回はたくさんの人気製品を企画開発するデザイナーに話を聞いた。一つひとつの製品にかけるこだわりと飽くなき追求心から、KAWAJUNがお客様にお届けしたいモノ・コトをお伝えしたい。
Q. 最近のハードウェア/インテリア金物のトレンドについてどのように捉えていますか?
立川氏(左):インテリアについてはこれまでと同様に北欧のデザインが根強い人気です。デザインについては、以前はシンプル志向のデザインが好まれていましたが、最近はお客様のニーズが多様化していると実感しています。つまり、「シンプル」を0の状態だとすると、1という「アクセント」の効いたデザインが求められているということです。 私自身、製品をデザインする上ではじめに行うのが、要件を満たすための最もシンプルと思われる「0」をイメージすることです。そして、次にその製品の最も活きる魅力を、機能面やデザイン面でポイントを付け加えていく。ポイントが多すぎると製品の魅力がぼやけてしまいますし、少なすぎると物足りなくなる。この「0→1」のプロセスを経ることで、その製品の印象が際立つのです。私が手がけたプラスワンアイテムコレクション『SC-61』というサニタリーも、まさにこのプロセスを通してデザインしました。シンプルでオーソドックスなデザインですが、他ではなかなか見ることのできないデザインです。
福原氏(右):インテリアなどはヨーロッパのデザインから学ぶことは多いですよね。ですが、とりわけ金物という点では、海外でもKAWAJUNほどデザインのバリエーションや、カラーの品揃えがあるメーカーは少なく、反対にKAWAJUNのデザインが海外で真似されていると感じるほど、KAWAJUNの製品は優れていると自負しています。 立川氏:「有名デザイナーがデザインしたプロダクト」という言葉を聞くこともありますが、確かに福原さんのプロダクトの方が機能面でも見た目でも洗練されていると思いますね。福原さんのデザインの魅力は、私が入社した時からすでに製品化されていたレバーハンドル『Vシリーズ』抜きには語れません。
福原氏:当時は、カラーも装飾も華美なテイストが好まれる傾向にあって、レバーハンドル『Vシリーズ』のようなシンプルなデザインは、室内の金物には向いていないと言われていました。当然、周囲からの反対もありましたが、こうした金物はまだ世になく、チャンスはあると確信めいたものがありましたね。3ヶ月ほどで製品化にこぎつけましたが、ディテールを追求し続けた結果、多くの方に支持される製品になりました。 立川氏:はじめてあのレバーハンドルを見たときは、縦横のバランスや太さのバランスに衝撃を受けましたね。デザインする上では苦労したことはなかったのですか? 福原氏:デザイン自体は難しくありませんでしたが、デザインした後の、成型や思い描いた素地の質感を出すのに、何十回もデザインを練り直しましたね。製品化されるまでは、製品の企画、デザイン、設計というプロセスを経るのですが、デザインが先行すると設計できないし、設計が先行しても見た目がおろそかになる。何度も試作品が上がってきては仕上がりをチェックして工場とやりとりを行い、素材の感触、太さのバランス、L字のラインなど、トータルで一つひとつクリアしていきました。
Q. KAWAJUNの製品をデザインしてきた中で、印象に残っている製品はありますか?
立川氏:階段手すり用金具『KH37・45シリーズ』ですね。プロダクトとしてはかなり小さいサイズなのですが、この小さな金物で相当な荷重に耐えなければなりませんでした。また、こうした金物は一つの手すりに複数設置する必要があり、数多く使っても見た目を損なわないシンプルなデザインと、コスト面の配慮も必要でした。 コストを抑えるために他メーカーのように塗装で仕上げることも可能ですが、見た目の妥協はしたくない。耐久性とコスト、デザインのバランスを取るのに苦労しましたね。本来、階段手すりは機能性の問題をクリアできていればいいはずですが、KAWAJUNが作る階段手すりはこれしかない、その答えを証明できた思い入れのある製品になりました。
福原氏:私の場合は2年前に手がけた『クラシックコレクション』。一見シンプルな製品ですが、この製品はカラーの展開にこだわりました。お客様のニーズは多様化し、それに合わせて住宅形式も多様化しています。どんな住宅形式にも合う、それでいて他とはひと味違う金物がほしいという住宅メーカーや建築事務所も多く、その思いに応えたのが『クラシックコレクション』です。アンティークのような温もりのある空気感でありながら、カジュアル、ソフト、エレガンスという3つの空間テイストをイメージしているため、設置する場所は同じでも、カラーによって全く異なる印象を与えられるのがポイントです。
Q. KAWAJUNの製品をデザインする面白さはどういったところにあると考えていますか?
福原氏:私がはじめてデザインに触れたのは、小学生の時に見た海外のスーパーカーでした。国産車とは明らかに異なる流線型のデザインフォルムに、子どもながらに感銘を受けました。それ以来、ずっとデザインに関わってきましたが、改めて実感するのは、おいしいものを食べた時、いい音楽を聴いた時、それと同じような感覚を、デザインを通じて提供するのが私のミッションです。つまり、そのデザインで、お客様が感動できるかどうか。反対に言うと、自分自身が感動できない製品であれば、何度もやり直す覚悟が必要です。それはデザイナーとしてのマインドとして絶対に捨ててはいけないものだと考えています。小学生の時に抱いた感動を変わらず持ち続けながら。
プロダクトはデザインを少し変えるだけで、その表情が大きく変化します。例えば、下のレバーハンドルのデザインパターン。「デザインを少し変えるだけで、プロダクトの印象は大きく変わります」と福原氏。
福原氏が最近手がけたトイレットペーパーホルダー『SC-663-XC』を見せてもらった。重厚感と高級感のある佇まい。その新しいデザインはシンプルながらディテールにこだわりが見られる。主にホテルなどで採用されていて、バスルーム空間の印象が変わる商品だ。
立川氏:デザインの面白さは、何もない0の状態からアイデアを形にして1を生み出していく作業にあると考えています。ただ、アイデアを形にする過程には、必ずと言っていいほど制約があります。先ほどの階段手すりを例に挙げても、限られた条件の中でどれだけいいものを作り出すのか、試行錯誤した結果が製品化につながりました。 シンプルなデザインと言うのは簡単ですが、シンプルだからこそ、突起や太さ、バランスなどディテールのデザインにも徹底的にこだわっていきたいです。そのこだわりは、必ずお客様に届くと確信しています。そして、お客様が「こんなのあったんだ!」と思わず言ってしまうような、ドキドキ、ワクワクする製品をデザインしていきたいです。 立川氏が手がけたキッチンハンガーシステム『KC-04』。ユーザーニーズを調査してキッチンペーパーホルダーやペットボトルの水切りなど実用的なアイデアを盛り込んだ。
福原さん:まだ、誰もやっていないこと、世に出ていない製品をデザインするのがKAWAJUN。私たちが細部までこだわった製品をショールームで見て、触って、その良さを実感してほしいと思います。
カワジュンショールームにて
<profiles>
福原 益次郎
ハードウェア事業部企画開発部デザイナー。独自の発想力で『クラシックコレクション』など、数多くのヒット商品を残す。特に、シンプルを突き詰め、ハードウェアの常識を覆したレバーハンドル『Vシリーズ』は名高い。
立川 和彦
ハードウェア事業部企画開発部デザイナー。大学は芸術学部にてプロダクトデザインを専攻。新卒でKAWAJUNに入社し、デザイナーとして数多くの製品のデザインを担当。自身が手がけたブラインドフック『AC-82』やキッチンハンガーシステム『KC-04』などに加え、プラスワンコレクション『SC-61』が大ヒットする。